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新 勝手にコム論

元宝塚歌劇団雪組トップスター朝海ひかるさん!舞台道を走り続ける朝海さんのちょっぴり昔の記録です^^

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和服の朝海さんネタで④


※朝海さんが以前「クロワッサン」で披露された和服姿があまりにお似合いだったので、勝手に『あかんべえ』の艶っぽい和服美人おみつさんを朝海さんと仮定して読んでいこうという企画です・・・。お暇つぶし企画(*´∀`*)4弾目ッッ!!







宴席は陽が落ちてから始まった。

白子屋と浅田屋は別々の座敷に案内され、太一郎と島次の膳を囲んだ。おりんは太一郎が料理の説明にと入った白子屋の座敷の壁にぴたりと身体をくっつけて、聞こえてくるやりとりに耳を澄ませた。


お化けさんは宴席には出なかったのだろうか。いや、それよりも島次に似たお化けさんはどこにいる?おりんは周囲を見回したが、さっき見た怖い顔の男の幽霊が今はどこにも見えなかった。

白子屋の座敷から聞こえてくる会話が何やら、騒々しくなった。白子屋のお静の霊おろしが上手くいかなかったのは、この太一郎のお膳のせいだという声だ。おりんは少しばかりおかしくなって、声をもらさないようにしっかりと口を閉じて笑った。結局お静は失敗したということか・・・。それとも先に来た時にきれいに祓いすぎてしまったとでもいうのだろうか。

そもそも按摩のじいさんは最初からお静のことを全然認めていなかったのだから。実際おりんは尋ねてみたかった。おりんに見えるこの家のお化けさんたちのうち1人でも、お静には見えたのだろうか・・・。


中の様子が、いよいよ騒々しくなってきた。それは太一郎が言い出したことから始まった。「先日、お嬢様お1人で起こし頂きました際には、座敷を見回って、座敷を掃き清めるようなものだとおっしゃって、お祓いをして下さいました。」

お静の声が裏返った。「何ですって?」
「あなた、なんでそんなデタラメを言うんです?いったいどういうことなのこれは!!」

がちゃんという音がした。誰かが膳を倒したか、膳を叩いたかしたようだ。

「分かりましたよ、あなたたち、浅田屋さんに何か言い含められたんでしょう?そうやってデタラメを並べてお静の気持ちを乱したり、わざと塩気のきつい料理を出して霊おろしの邪魔をして、白子屋の顔を潰そうとしたんでしょう?言いなさい。浅田屋にいったいいくら握らされたんです?」

とんでもないことになってきた。階段の方から音がする。多恵だった。大きな声を聞きつけて、様子を見に上がってきたのかもしれない。おりんは廊下で狼狽した。隠れるところがどこにもない。どうしよう。

そのとき、冷たい風が顔を撫でたかと思うと、階段の手すりの向こうに、おみつがふと姿を現した。何もない暗がりに、闇を分けてすらりと立ち出たおみつは、そのまま廊下をすうっと進んで、おりんの傍らへとやってきた。宴席の前に会ったときと同じ櫛巻きの髪に浴衣姿で、すっかり闇になったこの時刻に見ると、少しばかり寒そうだった。

「じっとしていなさいな。あたしが隠してあげるからね。」
そう言って、おりんのそばに腰をおろすと、守るように背中にかばってくれた。とっさのことだから、おりんには半ば透けたようなおみつの身体が本当におりんを隠すことができるのどうか、問いかけている余裕はなかった。

心配そうに階上の様子をうかがいながら、多恵が階段を上がってきた。その間にも白子屋の座敷でのやりとりは怒気を増して、お静の声はどんどん大きくなる。太一郎のなだめるような物言いも、かき消されて切れ切れにしか聞こえない。

浅田屋の座敷の唐紙が開いて、おつたが顔をのぞかせた。給仕のついでに話し込んでいたらしい。おつたの後ろに浅田屋の娘おりくの顔がのぞいた。浅田屋の人々の顔は少しばかり笑っている。白子屋の方でいったい何の騒ぎが起こったのかと、面白がっている様子だった。


「おやおや正直なもんだねえ。笑っているじゃないか。」おみつは喉をならしておほほと笑った。

「浅田屋さんはお化け比べに勝ったと思っているのかしら・・・」おりんはおみつに問いかけた。「あらまあ、どっちの勝ちも負けもないよ、おりんちゃん。だってごらんな、あの人たちの誰かの目に、あたしとおりんちゃんの姿が見えてるかい?」

見えてはいない。見えているもんか。

「わかってるんだ、あたしも。按摩のおじいさんも言ってた。あてにならないって。」


浅田屋も白子屋の座敷にぞろぞろと入り、ほとんど喧嘩のようなやりとりが続いた。

「だけどさ」おりんはおみつのそばで小さくなりながら続けた。「霊おろしがインチキかどうかってことと、お化け比べの勝ち負けは、また全然別の話なんだよ。だってお父ちゃんとお母ちゃんは、あたしみたいにおみつさんたちとは話ができないから、白子屋さんと浅田屋さんの言うことに振り回されちゃう。」

「そうか、そうだよねえ。考えてみりゃ迷惑な話だね」

「お化け比べなんかさせなくたって、あたしの目に見えることを正直に打ち明ければよかったんだ。そしたら、こんなインチキな人たちに利用されることもなかった。ちょっとの間でも、お静さんやおりくさんの霊おろしが上手くいけば、ふね屋からお化けさんたちを成仏させることができるかもしれないなんて、考えたあたしがバカだった」

思わず口走った本音だった。おみつはおりんを優しく見下ろして、何も言わずに微笑んだ。

あたしがバカだったんだ。こんなのお化け比べでもない。宴席でさえない。仲たがいをしている2つの家が、太一郎の工夫した美味しい料理を無駄にして、その膳を倒していがみ合っているだけじゃないか。

「し、じっとして」おみつが涙ぐむおりんを押し留めた。「ほら、ご覧よ、おりんちゃん」

おみつの指差す先に、おどろ髪が立っていた。今日もあの日と同じ、右手には抜き放った刀をさげている。

「おみつさん、あのお侍さんのことで何か知ってるの?」
「知りゃしないさ。玄の字は何か言ってるかい?」
「あのひとのことはよく分からないって」
「それはあたしも同じだけど、でもあの人は何か女のことで心にかかっていることがあるんだよ。こういうことについちゃ、あたしの勘に間違いはないね。きっと色恋がからんでいるのさ」少し笑いながら、おみつは言った。
「動いちゃ駄目だよおりんちゃん、隠れておいで」


廊下でごちゃごちゃと揉めていた一同は、結局白子屋の座敷へとなだれ込んだ。きゃあという悲鳴があがった。おりんはとっさに、悲鳴に刺激されて、またおどろ髪が暴れ出すのではないかとヒヤリとした。


「あたくしはインチキなんかじゃないわ!!」
お静が泣き叫ぶ。その時に、おどろ髪がビクリと反応してがくんと口を開けた。おりんは緊張した。今にもおどろ髪の刀をつかんだ手が持ち上がる・・・・・そして彼は座敷に暴れ込み・・・・・

その時、島次がすっと立ち上がった。その顔は面のようにのっぺりとして、ほとんど表情がなかった。ぽかんと開いた両目は節穴のように真っ暗で、そこには何の明かりも映っていない。


おりんはぞっとした。おみつは首筋を固くして、目を細めた。
島次の後ろにまたあの男のお化けさんが立っていた。島次に似たそのお化けさんの半分透けた身体が、すっかりと島次の上にかぶってしまった。

そして島次の口が開いた。
「ここから出て行け!みんな出て行け!出て行かねば取り殺してくれる!」

一同は呆気にとられて声も出ない。
おどろ髪が「おうおう」と声を上げた。おりんは鋭くそちらを見返り、そして、おどろ髪の血走った眼からどっと涙が溢れるのを見た。

「何という口のききようだ!!」
白子屋長兵衛が島次を睨みつけて憎憎しげに吐き出した。その瞬間、島次は白子屋長兵衛の首っ玉に両腕をかけてぐいぐいと締上げる。あまりの恐ろしさに棒立ちになっていた一同は、正気に戻り、一斉に島次の方へ殺到した。

「その手を離さんか、白子屋さんを殺す気か!!」
浅田屋為治郎が唾を飛ばして怒鳴りながら、島次の腕をとった。白子屋はぜいぜいと喉を鳴らし、咳き込みながら床を這って逃げ出した。

「おや、まあ。ご覧よおりんちゃん。」おみつが驚いたように声を撥ね上げた。為治郎と太一郎に羽交い絞めにされた島次は急にしゅんとおとなしくなった。まるで操り人形の糸が切れたみたいだった。そしておりんは見た。島次に似たあの男のお化けさんが、彼の身体からすうっと離れて出てくるのを。


「ちょいと、あんた」
おみつがするりと立ち上がりながら、男のお化けさんに声をかけた。撥でピンと弾くような、鋭い問いかけ。
「他所様の座敷を土足で踏み荒らすような真似は粋じゃあないね。あんたはどこのどなただい?」

男のお化けさんと対峙するおみつは、人が変わったように厳しく怖い顔をしていた。その爪はにわかに尖り、その口はにわかに毒を持った。

「女のくせに、やけに威勢のいい口をきくね、姐さん」男のお化けさんはそう言って、しわりとこちらに近づいてきた。
「俺がどこの誰であろうと、姐さんに何の関わりもなかろうに」

おみつは微動だにせず、ひるんだ様子もなかった。眉の間に深いしわを刻んで、心もち首をかしげてはいるが、背筋はしゃんと伸びている。
「関わりはあるよ。ここはあたしの縄張りだもの。一言の挨拶もなしに、ここで暴れられては、あたしの顔が丸つぶれだ」

「そいつはすまねえ、だがな姐さん、俺には俺の言い分があるのよ。あれは俺の弟でな・・・」お化けさんは気絶した島次が運び込まれた座敷の方へ顎をしゃくった。「あれは俺の弟でな。10年ばかり前、俺はあいつに殺されたのだ」


「あの人は島次さんといって、ここの料理をこしらえている板場の人だよ」おみつは確認するように、ゆっくりと男のお化けさんに問いかけた。「本当にあんたの弟なんだね?」

「俺は銀次だ。姐さん、よろしくな」

おみつはお愛想を返さなかった。
「あんたは島次さんを恨んで憑いているのかえ」

「そらそうだ。恨むだけの理由はたんとある。店を盗られた。女房子供を盗られた。命を盗られた。」
「あんたが憑いていることを島次さんは知っているの?」
「知っているさ。俺はさんざん夢枕に立ってやったのだから」
「あんたは島次さんをどうしたいの。今日のように人前でおかしな振る舞いをさせたって、それがあんたの益になることとも思えないけれどね」

「俺は島次の身体を乗っ取りたいのだ」
銀次のお化けさんはあっさりと答えた。
「あいつの魂を身体から追い出して、そこへ入り込んで、あいつの身体で残りの人生を生きたいのだ」

「姐さん、あんたにとっちゃ縄張りを荒されているようで不愉快だろうが、ここはひとつこらえちゃくれねえか。俺は長年かけて島次の魂を痩せさせてきた。あと一息であいつの魂を掻きだすことができる。そうしたらもう姐さんには迷惑をかけねえ。姐さんが望むなら、姐さんのために何か供養になることをしてやったっていいんだぜ」

早口にそれだけ言い切ると、彼は霧のように姿を消してしまった。


白子屋と浅田屋の一家は逃げるようにしてふね屋から去っていく。そのときにお静の顔をまじまじと見たおりん・・・。

「ねえ、お父ちゃん、あれはお静さん?先に来たお静お嬢さんとは違う人だよ」太一郎は最初、おりんの声など聞いていないようだった。でも袖に追いすがって何度も同じことを言うと、ようやく彼の目が晴れ、足が止まった。

「何だって?」
白子屋一家は階下へ下り、履物を履いている。その娘の横顔を確かめるようにして、太一郎はぽかんと口を開けた。「本当だ・・・」

「今度は何だと言うのだ!」うるさそうに太一郎を振り返って、長兵衛が言った。乱暴に押しのけられて、太一郎はよろめいた。


こうしてお客は誰もいなくなってしまった。


太一郎は玄関先に突っ立って、泣くような声でどういうことなんだと呟いた。おりんは父親の泣き顔を見るのが怖くて、助けを求めるような気持ちで階段の上を仰いだ。



しかし、おみつも玄之介もおどろ髪も、姿を消していた。すうっと寒いような風が吹き降ろしてきて、おりんの髪を撫でただけであった。









にゃぁぁぁぁぁあ~!!おみつッッ!!長いッっ!!


そうこうしている内に『トライアンフ』が始まっちまうよぉぉ!


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