新 勝手にコム論
元宝塚歌劇団雪組トップスター朝海ひかるさん!舞台道を走り続ける朝海さんのちょっぴり昔の記録です^^
和服の朝海さんネタで③
『エリザベート』のルドルフWキャストのお2人めが決まったそうですねぇ(*´∀`*)
これで、全キャストが揃ったのかな・・・?
今年8月に、中日劇場を皮切りに始まる4都市公演!!
まだまだコムちゃんのシシィを見ることが出来るっという実感が湧かないけれど、
水面下ではどんどんと東宝エリザベートに向けて進んでいってるのでしょうね!
あッ!!『トライアンフ~』のチラシをやっと入手できました(*´∀`*)
表面の接近加減が半端ないですねッ!
武田くんの堀の深さがすっごいカッコイイ!!
コムちゃんの前髪生え際の渦巻き加減が何だか可愛い!!
そして裏面のぶりぶりドレスのコムちゃんの微笑みよッ!!
かっわいいったらナイね。
少人数ながら、み~んな個性がばんばんチラシからも出まくっていて、
どんな舞台が繰り広げられるのか、今から楽しみですわ(*´∀`*)ノ
しぃかし、こちら兵庫県での公演は平日のみの4公演・・・。
かなり厳しいなぁ・・・・・くぉぉッッ(`ε´)ノ
と、かなりの間、ほったらかしにしちゃいました『おみつさん』。
続きをば・・・。
突然のお静の来訪も、ふね屋の人々の「お化け比べ」に相応しい宴席料理をつくりだそうという熱意に水をさすことはなかったようで、翌日も太一郎と多恵は夜明けと同時に台所にこもり、作業を続けていた。
おりんはその後も、玄之介と話すうちに、ここに彷徨うお化けたちは30年前にこの「ふね屋」の建物のすぐ近くに建っていた興願寺での恐ろしい出来事に関わりがあるのではないか・・・と思うようになった。
30年前のある夜、興願寺は凄まじい炎に包まれ、全焼した。
寺という上物がそっくり燃えてしまった後、焼け跡を掘った・・・・そこからはごそごそと骨が出てきたという。後になって興願寺の坊主たちの話をつき合せて分かったこと。寺に火をつけたのは住職だったのだ。火の手が上がり、騒ぎが始まったとき、住職が寺から逃げていくのを数人の坊主が目撃していた・・・。1人の坊主が言ったという・・・・「ああこれで、やっと恐ろしい厄介が終わる・・・」・・・住職は鬼に魅入られて人の道を踏み外し、たくさんの人を殺めた。山ほど殺めた。芋の皮を剥くように簡単に人を殺して、その骸を寺の裏に埋めていたのだという・・・。
そして、浅田屋と白子屋のお化け比べの当日がやってきた。
晴れ上がり、日差しの明るい日だった。ふね屋の人々は早朝から支度と仕込みにかかり、それはそれは忙しなく働いていた。仕事となると、おりんはうかうかと台所に踏み入ることが許されなくなる。だから顔を合わせることはなかったが、どうやら今回は島次という人が手伝いに来ているようだった。
その内に、背中のあたりが妙に冷や冷やとすることに気がついた。階段の脇にかがんだまま、ひょいと首をよじって後ろを見ると、すぐ目と鼻の先に5人の亡者の1人、按摩のじいさんが、おりんとそっくり同じ格好をして座り込んでいた。
「わわ!」おりんは叫んだ。
幸い、台所の方で騒がしい音がしており、おりんの声には誰も気付かなかったようだ。おりんはそろそろと階段の脇に戻り、按摩のじいさんと向き合った。
「今日のお客さま、うちでお化け比べをするんだって。知っていました?」
按摩のじいさんは額に深いしわを刻みながら階段の上の宴席の間に目をやった。
「本当よ。おじいさんたちの姿も見えるかもしれないね。」
浅田屋と白子屋の娘、お静とおりくの霊力が本物ならば、按摩のじいさんたちがふね屋から離れて成仏できるように、力添えをしてくれるかもしれない・・・とおりんは早口で言い足した。ところが、按摩のじいさんはそれを聞くと、口のへの字に結び、怖い顔になって吐き出すように言い捨てた・・・。
「成仏なんぞ、したないわい。」
おりんはぽかんと口を開けた。
「だけどおじいさん・・・。成仏しなかったら、ずっとここで迷っていなくちゃならないのよ。お化けのまんまでいなくちゃならないのよ。」
「それのどこが悪い」
おりんは返す言葉もなくて、そとんと尻餅をついた。確かにじいさんの言うことには一理ある。お化けたちを成仏させ、ここから立ち退いてもらいたいというのは、おりんの側の都合であり、願いなのである。でも・・・
「でもね、おじいさん。玄之介さまは、あたしがみんなを成仏させる手伝いをして下さるって言ってた。だからあたし・・・・・てっきり、みんなを成仏させるのは良いことだって・・・・だってそうじゃないの、お化けのまんまでいるなんて、悲しくないの。」
按摩のじいさんは鼻を鳴らした。「悲しくなんぞないわい。」
「・・・・・」
「あの若僧はおまえの手前、強がって見せただけじゃ。消えてなくなることを望むような奴がどこにおる。」
「そんな・・・」
よくよく見れば、じいさんの姿は半分透けていて、後ろの羽目板の模様がうっすらと見える。こんな間近にいても、生き物の気配というようなものはなくて、ただしんみりと寒いような感じがするだけだった。それでもじいさんは消えてなくなりたくはないというのだ。玄之介だって本音は同じだというのだ。おりんはすっかり頭が混乱してしまった。
ちょうどその時、台所から大きな盆を捧げて、あの島次という人が出てきたので、おりんは急いで頭を引っ込めた。島次は階段を上がっていく。
「おや、あれは誰じゃ」
按摩のじいさんは階段を上っていく島次を指して訊いたのではなく、階段の下にいる、島次を見上げるようにして立っている男を指していた。
島次より大柄だが、目元のあたりが彼に似た男が、思いつめたような顔をして島次の背中を見送っていた。白い前掛けをしていることろは包丁人の出で立ちで、その姿は半分ほど透けていた・・・。
「あの人もお化けさんだよね。」
おりんは島次に似た男から目を離す事ができなかった。
「さっきの板場の男に憑いていると見える。」
按摩のじいさんは不機嫌そうに言った。
「おりん、そんなところで何をしているの?」
母親の多恵に声をかけられて、おりんは島次に似たその男を見失ってしまった。
「お客さまが来ると、やっぱり賑やかでいいね、お母ちゃん。」
多恵は嬉しそうだった。客商売に効くお薬は、やっぱりお客が来ることなのだとおりんは思った。
「ええ、そうね。今日は大忙しだから、いい子にしていてちょうだいね。」
多恵はそう言って微笑むと、足早に階段を上っていった。
「わしゃ、帰る」
按摩のじいさんはおりんの方を振り向きもせずに、廊下の端まで滑り、消えてしまった。
「おじいさん。この後、もう一組お客さまが来るから、急に出てきたりしないでね。みんなびっくりしちまうから。」
返事はない。これはもっと早くに言っておくべき大事なことだった。
「ね。お願いだからねおじいさん。出るときはあたしにいっぺん声をかけてね。」
「そんなことを言うってことは、あんた、白子屋と浅田屋の巫女さんたちの霊力とやらを信じていないんだね?」
背後でいきなり声がしたので、おりんはびっくりして飛び上がった。
「おやまぁ、そんな顔をすると、目玉が飛び出ちまう、そら、受けてあげようか。」
おみつであった。階段の下から三段目に腰をおろして、笑いながら、おりんの顎の下に手のひらを差し出している。おりんは彼女の足元に寄り、階段の一番下に座った。今日のおみつは髪を櫛巻きにして、白地に藍色の大きな朝顔の柄を染めた浴衣をするりと身に纏っている。三味線も持っていない。ちょうど湯上りのような風情で、とても美しかった。
「白子屋のお静さんと、浅田屋のおりくさんにかかったら、あたしたち行き場のないお化けはみんな呼び出されて、どうして自分たちが未だにこの世に迷っているのか、洗いざらい打ち明けることになるんだろ?だからこそのお化け比べじゃないか」
おみつは面白そうにそう言った。
「按摩のじいさんだって、あたしだって、たとえ出てきたくなくたって、みんな呼び出されちまうはずなんだ。あんたはそうは思わないのかい?」
おりんは溜息をついた。
「そうだよね。だけど、おじいさんはそんなのあてにならないって言ってた。」
「あたしもそう思うよ。」
おみつは櫛巻きにした髪を手でするすると撫でた。
「だって考えてごらんな、先にお静がお祓いとやらに来たときだって、あたしたちは何にも感じやしなかったんだから。」
言われてみればそうなのだ。
「何だかあたし、頭がぐるぐるになってきた。」
おりんは正直に弱音を吐いた。
「いいじゃないか、分からなくても。お化け比べだろうが何だろうが、とにかくここにお客が来てくれたってことだけを喜んでおけばいいんだよ。お客の中身は、あたしたちもあんたにも、もちろんあんたの親たちにも、しょせん関わりのないことさ。」
「ねぇ、おみつさん。」
「何だい?」
「按摩のおじいさんは、成仏なんかしたくないって言ってた。」
おみつは黙っておりんの顔をのぞいている。おりんは足元を見ていた。
「おみつさんもそう?今のままでいたい?消えてなくなるなんて嫌だよね?」
おみつはちょっとまばたきをして、優しく微笑した。
「あんたはあたしたちがここにいるとお邪魔かい?」
おりんは言葉を呑んでしまった。そんなこと考えた事もなかった。
おみつはおりんの頭を軽く撫でた。おりんはすうと冷たいものを髪に感じた。
「本当のところを教えてあげようか。あたしたちはね、自分がどうしてこんな姿でここにいるのか、まずそれが分からないんだ。
人は死んだらどうなるのか、死んだらどこへ行くのか、自分は自分でなくなるのか、それとも自分は自分のままで、この世とは全然別のところに行くのか。
あたしたちにはそれが分からない。だって、死んだのはこれが初めてだからね。玄の字や按摩のじいさんだって、みんな同じさ。あたしたちはここにいる同じ身の上同士のことしか知らないから、お化けにはならない普通の人たちがどこでどうしているものなのか、てんで分からない。知りようもないんだ。
成仏するとどうなるのか、あたしは知らない。普通は成仏するものなんだから、あんたもそうしなさいと言われたら、さいざんすかすみませんねえと思うけれど、さてどうしたら成仏できるか分からない。なぜあたしは成仏していないのか、それも分からない。よっぽどひどい死に方をしたのかしら。」
おみつはころころと笑って、おりんの頭を撫でた。
「何であたしたちはこんな具合に宙ぶらりんになっているんだろ。事情のある死人なんざ、掃いて捨てるほどいるのにさ。どうしてあたしたちだけが変なんだい?それとも、ひょっとしたらこうなることが、成仏するってことなのかもしれないよ、おりんちゃん。あたしたちは何もおかしくないのかもしれないよ。」
おりんの小さな頭がまたぐるぐるとし始めた。
おみつの言うとおりかもしれない。お化けさんたちはこのままでいいのかもしれない。どこにも行くことはないのかもしれない。今こうしていることが、そのままあの世の暮らしなのかもしれない。
「浅田屋さんが来たようだよ。」
おみつに言われて、おりんは目を上げた。
「お揃いだね。」
と、おみつが笑いを含んだ声で言った。
「さあ、どうなるかね・・・」
陽が落ちるころ、宴席は始まった・・・。
長いですね、コレ。
朝海さんのところだけを抜粋するはずが、
やっぱりそれではお話が分からないので、
かなり詳細に書き連ねてしまってます^^;
こんなはずじゃぁぁぁ・・・・・。
もうすぐ上巻がおわります(*´∀`;)
朝海さんの情報なんかないかなぁ~~(`ε´)ツマンナ~イ
これで、全キャストが揃ったのかな・・・?
今年8月に、中日劇場を皮切りに始まる4都市公演!!
まだまだコムちゃんのシシィを見ることが出来るっという実感が湧かないけれど、
水面下ではどんどんと東宝エリザベートに向けて進んでいってるのでしょうね!
あッ!!『トライアンフ~』のチラシをやっと入手できました(*´∀`*)
表面の接近加減が半端ないですねッ!
武田くんの堀の深さがすっごいカッコイイ!!
コムちゃんの前髪生え際の渦巻き加減が何だか可愛い!!
そして裏面のぶりぶりドレスのコムちゃんの微笑みよッ!!
かっわいいったらナイね。
少人数ながら、み~んな個性がばんばんチラシからも出まくっていて、
どんな舞台が繰り広げられるのか、今から楽しみですわ(*´∀`*)ノ
しぃかし、こちら兵庫県での公演は平日のみの4公演・・・。
かなり厳しいなぁ・・・・・くぉぉッッ(`ε´)ノ
と、かなりの間、ほったらかしにしちゃいました『おみつさん』。
続きをば・・・。
突然のお静の来訪も、ふね屋の人々の「お化け比べ」に相応しい宴席料理をつくりだそうという熱意に水をさすことはなかったようで、翌日も太一郎と多恵は夜明けと同時に台所にこもり、作業を続けていた。
おりんはその後も、玄之介と話すうちに、ここに彷徨うお化けたちは30年前にこの「ふね屋」の建物のすぐ近くに建っていた興願寺での恐ろしい出来事に関わりがあるのではないか・・・と思うようになった。
30年前のある夜、興願寺は凄まじい炎に包まれ、全焼した。
寺という上物がそっくり燃えてしまった後、焼け跡を掘った・・・・そこからはごそごそと骨が出てきたという。後になって興願寺の坊主たちの話をつき合せて分かったこと。寺に火をつけたのは住職だったのだ。火の手が上がり、騒ぎが始まったとき、住職が寺から逃げていくのを数人の坊主が目撃していた・・・。1人の坊主が言ったという・・・・「ああこれで、やっと恐ろしい厄介が終わる・・・」・・・住職は鬼に魅入られて人の道を踏み外し、たくさんの人を殺めた。山ほど殺めた。芋の皮を剥くように簡単に人を殺して、その骸を寺の裏に埋めていたのだという・・・。
そして、浅田屋と白子屋のお化け比べの当日がやってきた。
晴れ上がり、日差しの明るい日だった。ふね屋の人々は早朝から支度と仕込みにかかり、それはそれは忙しなく働いていた。仕事となると、おりんはうかうかと台所に踏み入ることが許されなくなる。だから顔を合わせることはなかったが、どうやら今回は島次という人が手伝いに来ているようだった。
その内に、背中のあたりが妙に冷や冷やとすることに気がついた。階段の脇にかがんだまま、ひょいと首をよじって後ろを見ると、すぐ目と鼻の先に5人の亡者の1人、按摩のじいさんが、おりんとそっくり同じ格好をして座り込んでいた。
「わわ!」おりんは叫んだ。
幸い、台所の方で騒がしい音がしており、おりんの声には誰も気付かなかったようだ。おりんはそろそろと階段の脇に戻り、按摩のじいさんと向き合った。
「今日のお客さま、うちでお化け比べをするんだって。知っていました?」
按摩のじいさんは額に深いしわを刻みながら階段の上の宴席の間に目をやった。
「本当よ。おじいさんたちの姿も見えるかもしれないね。」
浅田屋と白子屋の娘、お静とおりくの霊力が本物ならば、按摩のじいさんたちがふね屋から離れて成仏できるように、力添えをしてくれるかもしれない・・・とおりんは早口で言い足した。ところが、按摩のじいさんはそれを聞くと、口のへの字に結び、怖い顔になって吐き出すように言い捨てた・・・。
「成仏なんぞ、したないわい。」
おりんはぽかんと口を開けた。
「だけどおじいさん・・・。成仏しなかったら、ずっとここで迷っていなくちゃならないのよ。お化けのまんまでいなくちゃならないのよ。」
「それのどこが悪い」
おりんは返す言葉もなくて、そとんと尻餅をついた。確かにじいさんの言うことには一理ある。お化けたちを成仏させ、ここから立ち退いてもらいたいというのは、おりんの側の都合であり、願いなのである。でも・・・
「でもね、おじいさん。玄之介さまは、あたしがみんなを成仏させる手伝いをして下さるって言ってた。だからあたし・・・・・てっきり、みんなを成仏させるのは良いことだって・・・・だってそうじゃないの、お化けのまんまでいるなんて、悲しくないの。」
按摩のじいさんは鼻を鳴らした。「悲しくなんぞないわい。」
「・・・・・」
「あの若僧はおまえの手前、強がって見せただけじゃ。消えてなくなることを望むような奴がどこにおる。」
「そんな・・・」
よくよく見れば、じいさんの姿は半分透けていて、後ろの羽目板の模様がうっすらと見える。こんな間近にいても、生き物の気配というようなものはなくて、ただしんみりと寒いような感じがするだけだった。それでもじいさんは消えてなくなりたくはないというのだ。玄之介だって本音は同じだというのだ。おりんはすっかり頭が混乱してしまった。
ちょうどその時、台所から大きな盆を捧げて、あの島次という人が出てきたので、おりんは急いで頭を引っ込めた。島次は階段を上がっていく。
「おや、あれは誰じゃ」
按摩のじいさんは階段を上っていく島次を指して訊いたのではなく、階段の下にいる、島次を見上げるようにして立っている男を指していた。
島次より大柄だが、目元のあたりが彼に似た男が、思いつめたような顔をして島次の背中を見送っていた。白い前掛けをしていることろは包丁人の出で立ちで、その姿は半分ほど透けていた・・・。
「あの人もお化けさんだよね。」
おりんは島次に似た男から目を離す事ができなかった。
「さっきの板場の男に憑いていると見える。」
按摩のじいさんは不機嫌そうに言った。
「おりん、そんなところで何をしているの?」
母親の多恵に声をかけられて、おりんは島次に似たその男を見失ってしまった。
「お客さまが来ると、やっぱり賑やかでいいね、お母ちゃん。」
多恵は嬉しそうだった。客商売に効くお薬は、やっぱりお客が来ることなのだとおりんは思った。
「ええ、そうね。今日は大忙しだから、いい子にしていてちょうだいね。」
多恵はそう言って微笑むと、足早に階段を上っていった。
「わしゃ、帰る」
按摩のじいさんはおりんの方を振り向きもせずに、廊下の端まで滑り、消えてしまった。
「おじいさん。この後、もう一組お客さまが来るから、急に出てきたりしないでね。みんなびっくりしちまうから。」
返事はない。これはもっと早くに言っておくべき大事なことだった。
「ね。お願いだからねおじいさん。出るときはあたしにいっぺん声をかけてね。」
「そんなことを言うってことは、あんた、白子屋と浅田屋の巫女さんたちの霊力とやらを信じていないんだね?」
背後でいきなり声がしたので、おりんはびっくりして飛び上がった。
「おやまぁ、そんな顔をすると、目玉が飛び出ちまう、そら、受けてあげようか。」
おみつであった。階段の下から三段目に腰をおろして、笑いながら、おりんの顎の下に手のひらを差し出している。おりんは彼女の足元に寄り、階段の一番下に座った。今日のおみつは髪を櫛巻きにして、白地に藍色の大きな朝顔の柄を染めた浴衣をするりと身に纏っている。三味線も持っていない。ちょうど湯上りのような風情で、とても美しかった。
「白子屋のお静さんと、浅田屋のおりくさんにかかったら、あたしたち行き場のないお化けはみんな呼び出されて、どうして自分たちが未だにこの世に迷っているのか、洗いざらい打ち明けることになるんだろ?だからこそのお化け比べじゃないか」
おみつは面白そうにそう言った。
「按摩のじいさんだって、あたしだって、たとえ出てきたくなくたって、みんな呼び出されちまうはずなんだ。あんたはそうは思わないのかい?」
おりんは溜息をついた。
「そうだよね。だけど、おじいさんはそんなのあてにならないって言ってた。」
「あたしもそう思うよ。」
おみつは櫛巻きにした髪を手でするすると撫でた。
「だって考えてごらんな、先にお静がお祓いとやらに来たときだって、あたしたちは何にも感じやしなかったんだから。」
言われてみればそうなのだ。
「何だかあたし、頭がぐるぐるになってきた。」
おりんは正直に弱音を吐いた。
「いいじゃないか、分からなくても。お化け比べだろうが何だろうが、とにかくここにお客が来てくれたってことだけを喜んでおけばいいんだよ。お客の中身は、あたしたちもあんたにも、もちろんあんたの親たちにも、しょせん関わりのないことさ。」
「ねぇ、おみつさん。」
「何だい?」
「按摩のおじいさんは、成仏なんかしたくないって言ってた。」
おみつは黙っておりんの顔をのぞいている。おりんは足元を見ていた。
「おみつさんもそう?今のままでいたい?消えてなくなるなんて嫌だよね?」
おみつはちょっとまばたきをして、優しく微笑した。
「あんたはあたしたちがここにいるとお邪魔かい?」
おりんは言葉を呑んでしまった。そんなこと考えた事もなかった。
おみつはおりんの頭を軽く撫でた。おりんはすうと冷たいものを髪に感じた。
「本当のところを教えてあげようか。あたしたちはね、自分がどうしてこんな姿でここにいるのか、まずそれが分からないんだ。
人は死んだらどうなるのか、死んだらどこへ行くのか、自分は自分でなくなるのか、それとも自分は自分のままで、この世とは全然別のところに行くのか。
あたしたちにはそれが分からない。だって、死んだのはこれが初めてだからね。玄の字や按摩のじいさんだって、みんな同じさ。あたしたちはここにいる同じ身の上同士のことしか知らないから、お化けにはならない普通の人たちがどこでどうしているものなのか、てんで分からない。知りようもないんだ。
成仏するとどうなるのか、あたしは知らない。普通は成仏するものなんだから、あんたもそうしなさいと言われたら、さいざんすかすみませんねえと思うけれど、さてどうしたら成仏できるか分からない。なぜあたしは成仏していないのか、それも分からない。よっぽどひどい死に方をしたのかしら。」
おみつはころころと笑って、おりんの頭を撫でた。
「何であたしたちはこんな具合に宙ぶらりんになっているんだろ。事情のある死人なんざ、掃いて捨てるほどいるのにさ。どうしてあたしたちだけが変なんだい?それとも、ひょっとしたらこうなることが、成仏するってことなのかもしれないよ、おりんちゃん。あたしたちは何もおかしくないのかもしれないよ。」
おりんの小さな頭がまたぐるぐるとし始めた。
おみつの言うとおりかもしれない。お化けさんたちはこのままでいいのかもしれない。どこにも行くことはないのかもしれない。今こうしていることが、そのままあの世の暮らしなのかもしれない。
「浅田屋さんが来たようだよ。」
おみつに言われて、おりんは目を上げた。
「お揃いだね。」
と、おみつが笑いを含んだ声で言った。
「さあ、どうなるかね・・・」
陽が落ちるころ、宴席は始まった・・・。
長いですね、コレ。
朝海さんのところだけを抜粋するはずが、
やっぱりそれではお話が分からないので、
かなり詳細に書き連ねてしまってます^^;
こんなはずじゃぁぁぁ・・・・・。
もうすぐ上巻がおわります(*´∀`;)
朝海さんの情報なんかないかなぁ~~(`ε´)ツマンナ~イ
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COMMENT
今、明け方です…^^
わ~い、おみつさん!
おみつさんの原作借りて来てみましたよ。まだ手をつけてはないんですが読もうと思ってます。絶対脳内映像でおみつ=コムさんですヨ。うふふ楽しみ♪
チラシも無事ゲットされたようで。ブリブリコムさん、かーわーいーいーーーって感じですよねー?
今日石井一孝さんが出ている『恋はコメディー』を観に行ってきたんですが、そこでもチラシ配られていました。『蜘蛛女~』からの流れなんでしょうね。
稽古場風景とか、早く情報流してほしいですねー。
和物
お久しぶりでございます^^
どんだけほったらかせば気が済むんでしょうかね・・・^^;
スミマセン。したらしたでやたら長いの(笑)
そうです!もうすぐ上巻が終わります!
おみつさんはあさひ様の想像通り、姉御です^^
おりんちゃんがキレイキレイと連呼するたび、
そうよねそうよね・・・と。
トライアンフチケットが「プラカラ」再び、の如く、ヤバイですね・・・・。
CSのOGナビは隔週ちゃんとチェックしているのですが、
まったくもって、無いですね。
始めの紹介のダイジェストの時点でその日の
OGがわかるので、すぐに消去なこの頃です。
tomekiti様。
お久しぶりでございます。
tomekiti様はたくさんの本を読んでらっしゃるので、
私とは、またまた感想が違うかもしれませんね~~!!
tomekiti様にも「これはコムさんだ!」と感じてもらえたら、
私の目に狂いはなかったということで(笑)
『あかんべぇ』以来、いい本にめぐり合わずで・・・・
これも実は友人に借りたもので、
自分が本屋で買うとろくなものがないんですよ・・・。
何か、コムさんっぽく読めそうな小説はないものでしょうか・・・・・。
妙な質問をぶつけちゃいましたね(迷惑)